故障のリスクを低減するには?
効率よいランニングフォームと軽いシューズが鍵です。
ダニー・アブシャー ニュートンランニング共同設立者
緩衝性のある厚いヒールパッドがついていて、プロネーションを抑制する強力なメディアル・ポストのシューズを履けば、足底腱膜炎 腸脛靭帯炎 脛の痛みといったランナーがよく経験するオーバーユースの怪我を予防できると思っている方は、再考の余地があります。
ランニング歴の長いランナーには知られている事実が、昨今、研究やニュースでとりあげられています。それは、ミッドソールが厚く、極端なプロネーション対策を搭載し、大きなヒールパッドがついているランニングシューズで、怪我は予防できないということです。
怪我を予防する鍵は、軽量シューズを使用し、ローインパクトなフォームで走ること。重量があり、かさばる構造のシューズを使用すると、ランナーの身体によけいな負担かかり、筋・腱・関節など自分の身体内部の状態を知るための感覚である自己受容感覚が鈍り、ブレーキをかけたり前進動作に使う筋肉や結合組織を使いすぎてしまいます。ひいてはオーバーユースの怪我につながってしまうのです。
ヒールパッドつきで、プロネーション対策を搭載した厚底シューズの使用が怪我の予防につながるという説は、科学的根拠に欠けることが、オーストラリア、ニューカッスル大学 の研究によって報告され、ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン誌2009年3月号に掲載されました。
研究結果を報告したクレイグ・リチャーズ博士は記者会見でこう述べています。「80年代から、厚手でクッション性が高く、ヒールの着地角度をコントロールする長距離用ランニングシューズが、怪我を予防したいランナーに勧められてきましたが、このようなタイプのシューズと故障率やパフォーマンスの関連を立証する研究は一切されていません。すなわち、そういう商品が長距離ランナーに有益であるという科学的根拠は全く存在しないのです。」
オランダの研究者によると、アマチュアランナーのうち37から56パーセントが少なくとも年に1度は故障を経験しています。もっともよくみられる怪我は膝下部分または足首より下の部分で、骨盤や腰の怪我もみられることがわかっています。
また、リチャーズ博士はこう語っています。「ヒールに傾斜があり、プロネーション・コントロール機能を搭載したランニングシューズをランナーに勧めることはできないし、またこの分野での研究結果がないことから、科学的根拠をもとにランニングシューズを勧めること自体ができないのです。このような不確定な情況から脱出するには、他の医療器具と同じように入念な設定による条件下での臨床試験が必要です」
「そうすれば、効果が立証されたランニングシューズのみが治療用器具として流通されることになります。そのような科学的実証なしに、スポーツ医療の専門家に、自分たちが勧めているランニングシューズの効果の有無、また害の有無もわかるわけがないのです」
ロンドン・デイリー・メール紙に最近掲載された記事によると、このオーストラリアでの研究報告は、ジャーナリストであるクリストファー・マクドーガル氏の著書「ボーン・トゥ・ラン」にも引用されています。また、ダニエル・リバーマン博士(ハーバード大学生物人類学教授)による「足の故障や怪我の多くが、足を弱くするシューズを履いて走ることに起因し、それがオーバープロネーションを引き起こし、膝の故障の原因になっている」という報告も参照されています。
効率よく走るには、できるだけ余分な筋力を使わないで自然に地表を移動するしくみと、自分の身体そのものを理解することが必要です。正しいランニングフォームで走るには、歩幅を短くとり、ピッチを上げ、 ミッドフット/フォアフット(つま先ではなく、拇指球の辺り)で軽く着地し、過剰な筋力を使って地面を蹴り上げず、すばやく足を持ち上げることが大切です。若干の前傾姿勢をとり、腕をリラックスしてふることも鍵です。
ニュートンランニングが「Land-Lever-Lift(ランド・レバー・リフト)」" とよぶテクニックを理解するには、表面がスムーズな床で裸足で走ってみることです。ごく自然にミッドフット/フォアフットで軽く着地し、すばやく足を持ち上げて次の一歩をふみだします。人間の身体は、ヒールストライクを繰り返すことによって生じる鈍的外傷を受容する構造になっていないため、堅い地表を走行するときは特に、踵から着地しないようにできているのです。最近のランニングシューズのほとんどがヒールストライク走法を助長し、地面を足で感じるフィードバックができにくい構造になっています。
長距離ランナーが陥りやすい問題は以下の二つです。1)前進推進力にブレーキをかけ、再度前進するため、つま先で地面をハードに蹴り上げてしまう過剰なヒールストライク走法。そして、2)スプリンターのようにつま先で速く走り、ふくらはぎ、大腿屈筋、アキレス腱などの前進動作に関係する筋肉のみを酷使して、身体に自然に備わっている衝撃吸収のしくみを活用しないことです。両者とも一歩踏みだすごとに垂直方向の動きが過剰にでるため、効率がわるく、余分な衝撃が身体に加わり、筋肉や腱へのストレスを生み出します。
ダニー・アブシャーは米国コロラド州ボルダーに本社を置き、効率的なミッドフット/フォアフット走法に適したランニングシューズを製造するニュートンランニングの共同設立者です。20年以上にわたりランナーやトライアスリートのための先進的なシューズを作り続けています。



